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zoom RSS 『赤毛のアン』人気の秘密

<<   作成日時 : 2008/12/29 14:41   >>

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日本ではものすごく人気があるのに、本国ではさっぱりという作品が時々あります。
特に本来の読者である子供の人気とは関係なく、大人の賢しらな思惑で翻訳されるかどうかが決まってしまうことのある児童文学では、こんなに有名な作品なのにどうして本国では誰も知らないの?などということが起きます。

フランダースの犬』なんかその典型で、舞台とされている村の住民は、最初、どうして突然日本人観光客がこんななにもない村に来るのか、理解できなかったそうです。
観光客も観光客で、行ってはみたものの、あまりにもなにもない、作品に関連したモニュメントの一つもないので驚きました。
その結果、正に押し寄せる日本人観光客のためだけに、ネロとパトラッシュの銅像を造ったほどです。

フランダースの犬
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岩波少年文庫 著者:ウィーダ/野坂悦子出版社:岩波書店サイズ:全集・双書ページ数:238p発行年月:


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日本人の感受性には大いに受けるセンチメンタリズム、次から次へと襲いかかるお涙ちょうだい的悲劇、純真で無垢な子どもが主人公のメロ・ドラマ。こんな作品が日本で受けないわけがありません。
が、当然のことながら、こんな作品が欧米で受け入れられるわけがありません。鬱陶しいまでのセンチメンタリズム、神をも恐れぬ酷い仕打ちをネロに加える大人たち、純真というよりはガキっぽいだけで成長しない主人公。そんなふうにしか見えないんです。

まあ、これは小説やドラマになにを求めるのかという問題であり、どちらがよくてどちらが悪いという話ではないのですが、『フランダースの犬』は子どもがのたれ死ぬのを大人が見捨てるというストーリーなので、残念ながら、その価値が今後世界的に認められることはありません。


そこまで原作が酷くなくても、日本での人気の割には世界的な評価の低い作品の代表はモンゴメリの『赤毛のアン』シリーズでしょう。もう日本ではこの作品の悪口を言う方が悪いというほどの人気ぶりです。
フェミニズムとの関連で、孤児で少し変わり者の主人公がすばらしい個性をそのままに成長してゆく物語である『赤毛のアン』の悪口を言うのは、その人が権威主義的だからだと非難されてしまうことさえあります。

つい先日も、大の大人が何人も集まって、『赤毛のアン』のどこが自分は好きなのかなどと語り合って、その人気の秘密を探ろうとする番組がありました。
自我を持って成長してゆく主人公、今となっては古くさいけれども、各所にちりばめられた名文句や文学作品からの引用などなど、『フランダースの犬』とは違って、『赤毛のアン』にはそれ自体に文学としての魅力があり、事実、本国でも最近は見直されつつあり、真面目な研究の対象もなっています。
また、プリンス・エドワーズ島という風光明媚な舞台のおかげで、アン詣での旅に出かける人も多いほどで、子どもというよりは大人を惹きつけています。

実際、モンゴメリは子ども向けに書いたつもりはなかったようで、その点でも作者の狙いが外れていなかったことが、一世紀も後になって証明されたかのようにも思えます。

しかし、そういった日本での受容のベースにあるのは、やはり、センチメンタリズムでしょう。アニメ化されたものを見ればよく分かりますが、過剰なまでに感傷的な主人公、鼻につく説教臭さ、純粋で真っ直ぐな主人公とその成長を見守る老人たち。
とにかく、子どもは汚れなく真っ直ぐでないといけないという信念が見事に作品化されているのが、実は日本における『赤毛のアン』の人気の秘密なのです。

表面的には悪さしてもいいんですよ、たまには間違ったことをしてもいいんです、普段は意地悪でもいいんです、だけど、その心の奥底はきれいでないといけない。いや、きっと美しいに違いない、そう信じさせてくれるのが『赤毛のアン』なのです。
つまりは、おセンチいう訳です。

ですが、それはあくまでも大人、特に説教好きで子どもに対して威張りたがる大人の感性であって、子どもはそんな鬱陶しい物語は好まないでしょう。その辺りが、『赤毛のアン』が世界的に見て支持されてない理由なのかもしれません。
近年では再評価されているとはいえ、それはあくまでも文学研究の対象としてであって、子どもたちの間で人気がでてきたという話ではないのです。
このことは反対に、シェークスピアや聖書、ワーズワース、バイロンなど、一言でいうならイギリス文学の素養があると、『赤毛のアン』が突然奥深い作品になるということです。


ところで、翻訳はものすごく有名なものでさえ抄訳だったりするので要注意です。
たくさん出ているので、文体が好みに合うものを選べばいいと思うのですが、一応信頼できるのは松本侑子訳の集英社文庫版です。

赤毛のアン
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集英社文庫 著者:ルーシー・モード・モンゴメリ/松本侑子出版社:集英社サイズ:文庫ページ数:555p


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日本人にはいちばん難問となる引用について、その原典を徹底的に調べあげている正に労作です。

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